- SATOMI CLINICAL RESEARCH PROJECT -
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非小細胞肺癌に対する免疫チェックポイント治療の期間短縮と最適化の研究を支援

日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)の肺がん内科グループ(代表:大江裕一郎国立がん研究センター中央病院副院長)が行なっている、非小細胞肺癌に対する免疫チェックポイント治療の期間短縮と最適化の研究(JCOG1701)に対して、SATOMI臨床研究プロジェクト(SCP)が200万円の支援を行い、「休薬しても効果が持続する患者」を選択するための指標となるバイオマーカー探索の解析を行いました。この研究では国立がん研究センター中央病院呼吸器内科の後藤悌先生が中心となっていて、その詳細は2022年1月14日の「ニュース・活動報告」にも掲載されています。


腎臓癌に対する免疫治療薬の最適化研究を支援

日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)の泌尿器科グループ(代表:西山博之筑波大学教授)が行なっている、腎臓癌に対する免疫チェックポイント治療の期間短縮と最適化の研究(JCOG1905、研究総括:江藤正俊九州大学教授)に対して、SATOMI臨床研究プロジェクト(SCP)が約108万円の支援を行い、電子的臨床検査情報収集(EDC)システム改修を行いました。


高齢者肺癌患者における術後活動度の調査研究の論文草稿まとまる

SATOMI臨床研究プロジェクト(SCP)理事の武井秀史先生が中心となって行った、高齢者肺癌患者における術後活動度の調査研究の第一次結果の論文草稿がまとまり、海外の医学専門誌に投稿準備中です。

題名:Prospective, multi-institutional observational study of activities of daily living in elderly patients after lung cancer surgery: report on data at post-operative six months.(肺癌手術後の高齢患者における日常生活活動度に関する多施設共同前向き観察研究:6ヶ月データの報告)

SCPは原稿完成と投稿手続きに関する支援を行いました。


第一回社員総会のご報告

 8月31日、一般社団法人SATOMI臨床研究プロジェクトの第一回社員総会が開かれ、令和3年度決算報告書、事業報告が承認されました。


令和3年度(2021年6月1日〜2022年5月31日) 事業報告書 非営利型一般社団法人 SATOMI臨床研究プロジェクト

  1. 事業の成果
    ・がん治療を中心とした医療の現状について情報発信を行い、問題提起をすることができ
    た。
    ・恒常的な情報発信のためのホームページを作成した。
    ・JCOG(日本臨床腫瘍研究グループ)・JCCG(特定非営利活動法人日本小児がん研究グループ)と提携関係を築き、協力して臨床研究を行う基盤を整備することができた。
    ・海外の研究団体と交流し、情報交換をすることにより将来の共同研究へ道を拓いた。
  2. 事業の実施に関する事項
    定款に記載された事業ごとに記す。一部、令和4年度にまたがる事項も、令和3年度から準備していたものは対象に含めた。

   1 がん治療を中心とした医療の普及、啓発に関する事業
    下記メディアにてがん治療の現状を紹介し、問題点を指摘した。
    医学界新聞インタビュー 第3439号(2021.10.4)
    デジタル朝日「論座」2022.1.6配信
    朝日新聞「ひと」2022.1.15朝刊
    NHKおはよう日本2022.6.5放送
    東京新聞2022.6.23・6.30朝刊
    日本海新聞「潮流」2022.5月?連載中(月1回)
    SCPホームページ開設https://s-cp.or.jp

   2 臨床研究及びその関連領域についての調査、研究、情報の収集、提供、相談及び支援に関する事業
    下記臨床試験を遂行・結果発表または支援した。
    ・JCOG1701(肺がんに対する免疫チェックポイント阻害剤の指摘投与期間に関する研究):症例登録中(対象患者:216人を予定)
    ・JCOG1710A(高齢者肺がん術後の日常生活活動度に関する調査研究):2021.8.9世界肺癌学会(オンライン開催)にて結果の一部を発表(対象患者:876人)
    ・JCCG研究(小児ランゲルハンス細胞組織球症の長期経過観察研究):2022.5.18事務経費サポート(対象患者:約100人)
    ・JCOG0707A1(肺がん患者の長期予後と合併症に関する調査研究):2022.4.6研究計画承認、2022.6.3研究開始(対象患者:963人)

  1. 各種研究会、研修会、講演会、相談会、セミナー等の企画、立案、運営、実施及び管理に関する事業
    下記組織を設立、活動を開始した。
    2022.3.5 JCOG医療経済評価小委員会設立(約120人)
    (2022.6.18 第一回小委員会開催:Webにて、参加者約100名)
  2. 出版業、執筆業並びに書籍、学術書、教材等の企画、デザイン、編集、印刷、制作、発行及び販売に関する事業
    下記のWeb連載を継続中。
    2021.9.21 m3.com(https://www.m3.com)にて隔週連載「医療維新」”Cost, value and value trials” (登録医師数:30万人以上)
  3. 関係団体、個人等に対する連絡、協力、調整、連携、交流、提言及び支援に関する事業
    下記団体との情報交換を行った。
    2022.5.21 OCCA(Optimal Cancer Care Alliance:https://optimalcancercare.org)第一回会議(オンライン開催)参加(参加者約100人)
  4. 各種情報の提供に関する事業
    今年度は該当する事項なし。

令和3年度非営利型一般社団法人SATOMI臨床研究プロジェクト(以下SCP)社員総会議事録

日時:令和4年8月31日午後3時?
場所:帝国ホテル5F会議室(東京都千代田区内幸町1-1-1)

出席者
社員:國頭英夫(代表理事)、石井昂(理事)
オブザーバー:澤田裕美子(澤田税理士事務所)、他書記一名

総社員2名(國頭・石井)全員が出席し、過半数に達しているので総会が成立することが確認され、國頭が代表理事として議長を務める旨宣言し、総会が開始された。

議題1 事業報告について
 事業報告書に基づき、議長より令和3年度の事業報告がされた。
 ・JCOG(日本臨床腫瘍研究グループ)とはどういうものであるかについての確認が質疑でなされた。
議決の結果、事業報告書が承認された。

議題2 収支決算報告について
 議長からの指名により、決算報告書に基づき、澤田より令和3年度の収支決算報告がされた。また、議長から、令和4年度からの健康保険組合連合会(健保連)から研究費支援が始まることが報告された。
 ・法人税、住民税及び事業税の項目についての確認が質疑でなされた。
議決の結果、決算報告書が承認された。

議題3 その他
 ・2年目に入り、「リピーター」の寄付者に対する特典について
  継続方針の確認がなされた。
 ・入会金及び年会費について
  正会員の入会金を1万円、年会費を5千円と定めた。賛助会員については継続審議とした。
 ・代表理事について
  國頭英夫の代表理事留任が承認された。

議長より出席者に謝意を述べた上で、午後4時に閉会した。

以上(文責:代表理事・國頭英夫)


東京新聞朝刊に國頭英夫代表理事のインタビュー記事が掲載されました。

 6月23日付けと6月30日付けの2回にわたってSCP活動の理念を分かりやすく説いたものです。結びの言葉のみを引用します。
〈医療費に糸目を付けず湯水のように使いながら私たちは寿命を延ばしてきた。しかしこれからは人間の寿命を120歳に延ばすよりも、次世代の若者がわれわれと同じように、元気に80歳になれることを目指すべきだ。
 私には娘がいるが、当然、私は娘より先に死ぬべきだ。私の母親は健在だが、私より先に死ぬべきで、だれよりそう望んでいるのは私の母親自身だ。
 そして、ただやみくもに医療費を削るのでは、二宮尊徳の言う「道徳なき経済」になってしまうから、ちゃんとした研究で、無駄なところのみを省き、スリムだが価値を高めた医療で「最低限」を保つ。そうしなければシステムは崩壊し、後には「最低の医療」が残るだけになる。〉


特定非営利活動法人「日本小児がん研究グループ」に、日本で年間100人程度が発症する稀な小児腫瘍「ランゲルハンス細胞組織球症」の長期経過を観察する調査研究のため、200万円を寄付しました。

 2022年5月18日に、特定非営利活動法人「日本小児がん研究グループ」に、日本で年間100人程度が発症する稀な小児腫瘍「ランゲルハンス細胞組織球症」の長期経過を観察する調査研究のため、200万円を寄付しました。

 この病気は、化学療法で「治る」ことが多いとされていますが、治療終了後の合併症発生が多く、その中には治療のために起こるものもあります。また後になってからの再発やそれに伴った合併症も発生します。それらは10年〜15年以降に患者さんのQOLに大きく関わって来るので、丁寧な経過観察と対策が必要になります。詳細は、国立成育医療研究センターの塩田曜子先生からの現場レポートをご参照ください。

 成人のがんと違って、小児腫瘍の患者さんでは、「10〜15年後」というのは、つまり、「人生これから」の時期です。病気を治すことだけでなく、治った後の人生を考える、というSCPの理念に一致するものと考え、研究の支援を行いました。 


臨床研究の現場から

稀で不思議な病気、LCH(ランゲルハンス細胞組織球症)の長期フォローアップ研究:20年先を歩んでいる先輩患者さんが教えてくれること

国立成育医療研究センター 小児がんセンター 塩田曜子


がんに対する臨床研究の団体JCOG(日本臨床腫瘍研究グループ)内に医療経済評価小委員会が設立されました。

 悪性腫瘍に対する臨床研究を行う団体として日本最大であるJCOG(日本臨床腫瘍研究グループ)の中に、医療経済評価委員会(規定により発足時は「小委員会」)が設立されました。これは、SCPの國頭英夫代表理事の働きかけにより、3月5日のグループ全体会議で承認されたものです。患者さんへの最適な治療を開発するミッションを持つ研究団体の中に、わが国で初めて医療経済もしくは“value”の概念が公式に導入されたことになります。

 委員長には國頭が、また副委員長には国立がん研究センター中央病院の後藤悌先生が指名されました。JCOGに参加しているがん研究者から委員会メンバーを募集したところ、申込者が殺到し、早々に打切りとなりました。それでも通常のJCOG委員会は15〜20人程度で構成されるところ、「オブザーバー」参加も含めると200人を超える見込みです。


肺がんの手術では5年生存率が云々されるが、その内容や、さらに5年以降どうなるか、については、調べられていない。そう言った長期に亘る地道な臨床研究をしている若き医師から現場レポートが届きました。

四倉正也

肺癌手術後の長期フォローアップ研究: 肺癌が「治った」その先にあるものは?

国立がん研究センター呼吸器外科医員 四倉正也

 私たちは現在、早期の肺癌に対して手術を受けた患者さんが長期的にどのような経過をたどっているかを調べています。

 肺癌に限らず、多くのがんで、手術後に5年間、再発なく過ごすことができれば、そのがんは「完治した」とみなされます。これは、5年を超えた後にがんが再発することは少ないと信じられているためです。手術後5年を区切りとするこの考えは、古くから世界で広く受け入れられてきましたが、検診の浸透や画像技術の発展によって早期にがんが発見・治療され、がんの治療法も進歩している現代では、5年後の「その先」を見据えることが必要です。

 最近私たちの研究グループは、臨床試験の結果として、2008年から2013年までに全国約50の施設で手術された、リンパ節転移や他臓器への転移がない小型の肺癌(いわゆるI期の肺癌)の患者さん963人の手術後の生存率を報告しました。その内容は、手術後5年間肺癌が再発せずに生存された患者さんの割合は約80%で、再発した状態で生存されている方も含めると、手術後5年間の生存率は約90%というものでした。約90%の患者さんが、肺癌の手術後5年間ご存命でいらっしゃるので、難治がんの代表である肺癌の治療成績も随分向上した、とも言えますが、よく見てみると、話はそう単純ではないことが分かりました。

 5年間無再発で生存された場合には、通常は肺癌が「完治した」とみなされ、その後の生存率はほとんど低下せずに一定の数値を維持されることが想定されます。しかし実際には、手術後5年を超えても、生存率は一定値が維持されず徐々に低下し続けることが分かったのです。肺癌が「完治した」はずなのに、その後も患者さんは一定の割合で何らかの理由でお亡くなりになっていることを意味しています。ご高齢の患者さんがお亡くなりになるケースはありますが、私たちの研究の患者さんは、年齢の中央値(研究にご参加いただいた患者さんの年齢を小さい順に並べたときの真ん中の値)が65歳で、他に目立ったご病気をお持ちでない方です。手術後5年で年齢中央値が70歳ですから、通常であれば肺癌が完治していればお亡くなりになる方は少ないはずです。

 それにもかかわらず、手術後5年目以降もお亡くなりになる方が絶えないのは、どのような背景があるのでしょうか。推定される可能性は、大きく4つあると考えています。

 第一は、肺癌が遅れて再発することです。手術後5年を超えた後に肺癌が再発することは稀ですが、ゼロではありません。特に早期癌のような活動性の低い肺癌では、長い時間をかけて再発する可能性があることが報告されており、それが生命に関与する病態になることが考えられます。しかしながら、実際にその頻度がどれくらいで、どのような時期にどういった形で再発し進行することが多いのか、十分なデータは未だありません。

 第二は、二次がんの影響です。二次がんとは、肺癌の手術後に新しく生じた別のがんのことです。初回の肺癌の再発ではないとみなされるものです。一度肺癌にかかった患者さんは、その後時間をあけて再び新たな肺癌ができる可能性が、一般の方よりも高くなると言われています。初回の肺癌が手術によって「完治」しても、その後二次がんが生命を脅かすことが起こりえます。肺癌ではなく、胃癌や乳癌など別のがんができる可能性も当然ありますが、そのような二次がんの実際の発生頻度や治療の状況などは十分なデータがありません。

 第三は、治療の影響です。手術や抗がん剤のような治療は、身体に負担をかけます。それによって肺癌が治っても、身体に負担が残り、例えば他の病気にかかった時に適切な治療を受ける余力が不足してしまうなど、後々に影響が出てくるかもしれません。

 第四の要素は、併存疾患の影響です。肺癌患者さんの中には、過去にタバコを吸っていた方も多く、狭心症、心筋梗塞や脳卒中、肺気腫などの病気になりやすいリスクがあります。そのような併存疾患のケアのために、肺癌治療後にどのようなフォローアップを行うべきか。詳細の検討はなされておらず、データをゼロから集める必要があります。

 これまでのがん診療は、治療後5年の生存率を向上させることを最も重要視して発展してきました。もちろん5年生存率を向上させることがとても大切であることに疑いの余地はありませんが、特に早期がんなどで多くの患者さんが5年生存を達成しうる現在は、5年生存後のその後のことを考えなくてはなりません。

「治った」と思っている肺癌が、5年目以降にどのような挙動を示すのか、肺癌に対して行った治療がどのような負担を身体に及ぼし、5年目以降も続いてゆく患者さんの人生にどう影響してくるのか。これらの問いに答えるために、私たちは前述の研究にご参加いただいた患者さんをより長期的にフォローアップする取り組みを行っています。

 最終的には、肺癌患者さんにとってどのような治療を行うことがより適切で、治療後にどのような点に気をつけるべきかを明らかにすることで、患者さんへの負担を減らしながらより高い生存率を達成し、ひいては過剰なコストも抑制する、長期的に持続可能ながん診療を実現することを目指しています。

 この研究は、時間がかかり、地道に情報を集め続けることが求められる、根気のいる研究です。企業による研究や公的資金を投入する大規模組織による研究は短期的な結果が重視されることが多いため、このような研究はなかなか行われません。とはいえ、誰かがやらねばならない研究なので、われわれは、社会的に重要なインパクト持つにもかかわらず公的資金では実現しにくい研究にも積極的に取り組み、世界に情報を発信したいと考えています。